アマチュアスチルカメラマンのための動画撮影のススメ

動画機能を持つミラーレスカメラは、いつの頃からか映像メディア系のカメラマンからも注目を集めるようになっていました。フォーカスを送っている最中も画を撮り続ける動画撮影において、アダプターを使いマニュアルフォーカスレンズを装着することが必要とされたのです。



それまでマウントアダプターは、写真マニアのモノでした。僕には動画の知識は皆無でしたし、映像の世界で重宝されるとは想像だにしていませんでした。

映像を生業とされるカメラマンから引き合いや問い合わせが多くなり、勉強の必要性を感じ動画を撮り始めたのが3年ほど前です。最初は、わけもわからず撮影していました。これが素人ながらに面白く、疑問点はご来店くださるカメラマンにかわるがわる質問できたので、知れば知るほどにまた面白く、下手っぴながらも動画を撮り続けております。

今のデジタルカメラの殆どに動画機能が備わってますが、一般にアマチュアカメラマンは映像系の情報に触れる機会も少なく、動画機能を使ったことがない方が多いと思います。

mukのサイトを見てくださるお客さまは、一歩踏み込んだマニアの方が多いのでこの楽しさを伝えたく記事を書いております。







僕の少ない経験でしか語れませんが、初歩的な事を書いてみます。

1、動画といわれても何を撮ればよいのでしょうか。



写真と同じく三脚を使いしっかり構図を決め、動いている物を撮ってみましょう。

写真では、月を撮るには時に雲が邪魔をしますが、動画では月に雲が流れてくると画になります。
花の写真では、風が吹くとピントが取れませんが、動画では揺れる花が画になります。

三脚は必ず必要です。手ぶれ防止機能はあれど、手持ち撮影での揺れている動画は、見づらいものです。映像表現として緊張感を出すなど、ブレが必要な時にしか手持ちはしないと聞きました。

三脚に固定してカメラを動かさずに撮影することをフィックスといいます。
基本フィックスで、数秒のカットを撮影し編集で繋げれば作品ができます。


2、どんなカメラで撮れるの?設定はどうすればよいですか。



カメラは動画機能が付いていればデジタル一眼でもミラーレスでもどちらでもかまいません。
フルHDの30Pに設定して撮影してみてください。

フルHDとは撮影解像度の規格です。ピクセルでいうと1920x1080です。写真で1600万画素のカメラでもフルHDで撮影すれば1920x1080の解像度の動画が撮れます。
4K(FHDの4倍)に向かってますが、今のところ一般的なテレビや映画館はフルHDです。解像度的にはプロの映像と同等で撮れるのです。

24p、30p、60p、とありますが、それぞれ、秒24コマ、秒30コマ、秒60コマ、の事です。

パソコンで編集して見せたり、YouTubeなどにアップするのも30pで良いと思います。

30pでの撮影では、秒30コマなので、シャッタースピードは1/30から使える事になります。もっと低い設定もできますが、差分を同じ画のコマが被るのでもったいですね。また、シャッタースピードも、写真撮影のように早いSSが使えるわけではありません。あくまで一秒間に30コマなので、例えば1/2000など早いSSを使うと撮影されない瞬間が長くなりパラパラした画になります。

また、シャッタースピードに関係して蛍光灯下での撮影で発生するフリッカーの問題もあります。西日本では60Hz、東日本では50Hzですので、シャッタースピードはそれぞれ1/60の倍数、1/50の倍数を使用することになります。そうすると、使えるシャッタースピードは限られ、東では1/50、1/100、西では1/60、1/120となります。
倍数ならシャッタースピードはあげられますが、早いほどパラパラした画に向かいます。
60pで撮影する場合は、もう少し早いシャッタースピードでもなめらかに撮れると思います。

動画では、マニュアル露出で撮影することが基本で、明るいときはNDフィルターを使うことになります。フォーカスも基本マニュアルで、スムーズにピントを送るには、マニュアルフォーカスレンズのヘリコイドが必要です。

僕は、Nikon1 J1で動画を撮り始めました。商品のプロモーションを兼ねての動画撮影です。
簡易商品撮影台の上で撮っており、動く物が無いので撮影カメラをパンさせてましたがあまりうまくいかず、商品側を回していました。



この動画はフジXマウントのヘリコイド付きMマウントアダプターの紹介です。




Nikon1 J1とNFD50mmf3.5マクロを使いました。シャッタースピードは1/100です。
ヘリコイドを使ったピント合わせを見せるため、X-Pro1の動画機能も使いました。
後半のボトルキャップを使ったピント送りがX-Pro1とズミクロンM 50mmでの撮影です。
この時は意識していませんでしたが、ピント送りというレンズワークです。
写真とは違いピントリングの操作の間も撮影されているわけです。

X-Pro1の動画撮影機能はシャッタースピードはオートしかなく、蛍光灯のフリッカーが出ています。
この頃は、YouTube にアダプタのネタを上げる人も少なかったのか、アクセス数が多くてびっくりしました。


3、編集はどうすればよいのでしょうか。



カメラに編集ソフトがついて来ないので、ソフトは別途購入します。

今はSony VEGAS Proを使ってますが、少し前までその廉価版のSony Movie Studioを使ってました。しかし僕の使い方だとProも廉価版も全く変わりないとわかりました。プロが使う機材との連携など関係ないからです。

タイムラインに、カットを切り取りながら並べるだけですので、そう難しい事ではありません。繋げる順番や並び方で、スムーズさや印象が変わるのも面白いです。Sony Movie Studio Platinumはとても安いのでお勧めです。
Sony Movie Studio Platinum
http://www.sourcenext.com/product/sony/moviestudioplatinum/?i=sony_top

Movie Studio 13 Platinum 半額キャンペーン版 ガイドブック付き



また、皆さんお持ちであろうフォトショップCCにも動画編集機能があります。
動画ファイルをドラックドロップするとタイムラインが現れて編集できます。


音楽はSonyのACID Music Studioを使っております。
ループ音源を切り貼りすることで曲ができあがります。こちらもとても楽しいソフトです。

ACID Music Studio
http://www.sourcenext.com/product/sony/acidstudio/?i=sony_navi

ACID Music Studio 10 半額キャンペーン版 ガイドブック付き



また、YouTubeでもWEB上で編集ができ、用意された音楽を乗せることが出来ます。
無料ですので、トライしてください。

編集の時間も大変と思われがちですが、上にあげた短い動画だと、撮影と音楽含めて3時間ほどの作業です。
動画の長さは1,2分ほどが良いかと思います。

もっと時間をかければクオリティーは上がるのかもしれませんが、楽しめる範囲でよいかと思ってやってます。



4、ナレーションについて。




本当は自分でしゃべればよいのですが、僕は滑舌が悪くきれいにしゃべれないので、テキスト読み上げソフトで音声を入れてみました。
mukの動画では説明調のものが多く、キャプションを入れなければわからないとの声もありました。しかし
せっかくの動画ですので、文字を読むのではなく画を見てもらおうと思い進めましたが、どうしても説明しきれないテーマもあり、テキスト読み上げソフトの音声を導入しました。




この動画は、Nikon1 V1とロシア製16ミリ映画用のズームレンズMeteor 5-1 17-69mmf1.9 を使って撮影しました。

1インチセンサーのニコン1は、16mmフィルムのフォーマットに近いのでケラれも少なく撮影できます。(16mm映画フォーマットより1インチセンサーのほうが少し大きい)

小さいフォーマットでの撮影はパンフォーカスになりがちなので、ピントが深く撮影が楽です。動画の中では、広角側のケラれを編集で上下をクロップ(トリミング)し、ケラレを回避しております。

このレンズの母体のカメラは、クラスノゴルスク3というアマチュア向け16mmカメラです。セットの中には本体とレンズのほかに、NDフィルターとクローズアップレンズも付属しており、このセットで撮れるんだ!と心躍るものがありました。
メテオールは操作感も独特ですっかりお気に入りのレンズです、いくつか撮影してYouTubeに上げております。

テキスト読み上げソフトで音声を入れる事で、編集にストーリーが出来てまとめやすく感じました。

前半のカメラ、レンズの画はGH3とNFD28-55mmを使って撮影しております。
手袋をしているのは、手がアップになるため、手入れをしていない爪や皮膚の感じが生々しいからです。
手専門のモデルさんがいるのは、こういうことかと納得しました。


Nikon1でアダプタを使うと、露出計も働かずマニュアルモードのみの撮影となりますが 、動画では弱点ではありません。

動画は、基本マニュアル露出となります、明かるい所は明るく、暗い所は暗く映ったほうが自然だからです。撮影中に露出は動かないほうが良いのです。

V1のダイアルを動画モードに設定すると、ファインダー画面が常時プレビューの状態になるので、ファインダーの明るさで大まかの露出は判ります。正確に露出を見たい時は、動画モードのままでもシャッター切ると写真が撮れますので、プレビューでヒストグラムを確認すると良いです。
拡大ピント機能も効かないので、ピントが不安ですが、そこは小さいセンサーの強みで絞ってあれば、そこそこ大丈夫でしょう。



はじめて、ナレーションを入れてみた動画です。

ナレーションで複雑な説明をしています。
こちらはGH3とNFD28-55mmで撮影しました。ピント送りや、スライダーによるトラックショットを試しています。



5、4Kで撮影して編集はできるのでしょうか?



やってみました。
Cマウントシネレンズ、シネエクターのセットレンズを使い、GX8の4Kモードで撮影してみました。最終的にはフルHDにエンコードしています。




GX8などパナソニックのマイクロフォーサーズ機の4Kモードでは、センサーの有効サイズが1インチほどにクロップされます。Nikon1と同じく16mm映画フォーマットに近いです。
4kで撮影してケラれる部分をクロップ本来のフォーマットでフルHDにダウンコンバートしてみました。

Cマウントシネレンズブームでは、マイクロフォーサーズでケラれるワイドレンズは嫌われていましたが、こうやって使えばセットレンズとして生かされます。

krasnogorskのメテオールもシネエクターもアマチュア向けの16mmカメラ用なので、こうして本来の使い方ができるのもアマチュア動画の楽しみです。


カメラ、レンズの画は、GH3とNFD28-55mmです。
オープニングでは、ズームとピント送り、レンズ3本並んだ画では、スライダーを使いました。63mmを見せてる画はパンです。こういうカメラワークは楽しくてやりすぎてしまいます。

4kの編集作業ですが、僕のPCはi5の3.2GHz メモリー16GB GeForce GT640 、そう高いスペックではありません。編集ソフトのプレビュー画面ではカクカクしてまともに確認できません。長いカットを撮っているわけではないので、大体この辺とあたりを付け編集しました。もともと短い動画ですので、エンコードしてから確認しやり直しても苦ではありません。



6、α7でフルサイズ撮影





フィルム映画のフォーマットは、35mmフィルムが縦に走るので、スチルでいうハーフサイズが標準的フォーマットで、デジタルで言えばAPS-Cサイズです。では、フルサイズの動画は何か?ビスタビジョンという横にフィルムが走る特殊なカメラを使う大型映像となります。もはや特殊撮影ともいえる仰々しいイメージですが、ソニーα7の登場によりアマチュアがたやすくフルサイズ撮影できてしまうのは、なんともこそばゆい感じです。浅いピントはとても難しく動く物は撮れそうもありません。
なめらかにピントを送れるのは、昔のマニュアルフォーカスレンズならではです。



7、動画にはズームレンズでしょうか。



MF時代のズームレンズを生かすためバックフォーカスを調整する方法を動画にしてみました。
X-T10にNFD35-105の組み合わせです。


マウントアダプターのフランジバック長は、少し短め(オーバーインフ気味)に作ってあります。ミラーレスカメラは、厳密なフランジバックの距離を持つ必要がなく、公差が認められているので、アダプタを丁度に作ることはできません。
写真撮影時はデメリットは少ないのですが、ズームレンズの場合は引きボケと言い、ピントを合わせても、ズームするとピントがずれる事になります。写真の場合はピントを合わせなおして、シャッターを切れますが、動画の場合はレンズワークとしてズームの効果を撮影しているので、それでは困ります。

アダプタが2ピース構造の場合は、昔ながらの方法、シム調整でフランジバック長を合わせれば、引きボケは起こりません。個々のカメラごとに調整は必要です。テレビ局で使われるENGのカメラには、レンズにバックフォーカスを調整する機構がついており、カメラ本体とレンズを装着した時は、まずバックフォーカスの調整をするのが鉄則と聞いております。

この動画のように調整すれば、ズーム効果が撮影できます。

現代のオートフォーカスレンズは、ズームするとピント位置がずれてしまう設計なので、古いマニュアルフォーカス時代のレンズが生きてきます。


動画撮影には、写真撮影と違ったレンズワークやカメラワークがあり、その効果もとてもわかりやすく、自分のようなカメラ好きにはとても楽しいものです。マニュアルフォーカスレンズのピントリングのなめらかな手触りもそのまま動画で映ります。編集前程での撮影もモノクロの暗室作業と同じように楽しみとなりました。


僕らアマチュアカメラマンでも、テレビや映画で良いお手本をたくさん見ているので、個人で取り組んでも、なかなか学習しやすい趣味だと思います。

この機会に、赤いRECボタンに興味を持っていただければ幸いです。









2016年1月16日追記

最近入手したキャノン・ニューFD28-85 f4 ズームレンズで撮影してみました。
カメラはルミックスGX8です。




↑このレンズはマクロ域ままでピントリングがそのまま全域ズームするので動画で便利に使えます。



↑更にフォーカルレデューサーと組み合わせて、外に撮影に行きました。
ユリカモメを撮影しました。逆光のレンズフレアも楽しんでみました。

マイクローフォーサーズ用フォーカルレデューサー内蔵マウントアダプタは、
画角を、換算2倍から1.5倍ほどに広げ、ワイドがかせげます。
集光することで絞りが一段明るくなるおまけ付きですが、
なにより内蔵レンズユニットを回すことにより、バックフォーカスの調整できるのがMFのズームレンズには嬉しい機能です。

Focal Reducer FD-MFT RJ
http://blog.monouri.net/archives/52275958.html



2016年3月6日追記

fuji X-T10とロシア製レンズのインダスター61(53mmf2.8)を使って撮影してみました。





横浜市栄区の古民家に行ってきました。
ヘリコイド内蔵のMマウントアダプタを組み合わせたので、ピント送りも楽にできました。
X-T10はISO感度の設定が、写真撮影の時に使う通常のメニューでは動画撮影には反映されません。
設定メニューから動画設定に入って「動画感度」で設定しなければなりません。
インダスターのフィルター径用のステップリングの持ち合わせがなく可変NDが使えなかったので、感度で調整していたのですが、通常の設定で感度を変えてもどうも反映されないので夕刻の現場で慌てておりました。(笑)


ライカMマウント接写ヘリコイド付きアダプター X-Pro1 X-Pro2,X-E1,2 X-T1,10用マウントアダプタ
http://blog.monouri.net/archives/52163899.html



2016年3月24日追記

ソニーα6300にヘリオス44を装着してボケ4K動画を撮影してみました。




SONY A6300 4K Bokeh Movie Test HELIOS-44-2 58mmf2.0 Russian M42 Old lens

アダプタは、ヘリコイド付きのM42マウントアダプタを使いました。

レンズのヘリコイドとアダプターのヘリコイドを合わせて使うと。
ピントの距離に制限を作れるので、フォローフォーカスではありませんが、動画のピント送りが楽にできました。
ピントの移動=ボケの変化も、動画ならではの楽しみですね。



こちらは、α6300の120FPSのハイスピード撮影機能を使ったスローモーションです。

SONY A6300 120FPS HD Slow Motion Video Test Canon NFD28-85mm f4

近所の野毛山動物園に出かけました。
レンズはNFDのMFズームで、動物を撮るのはとても難しかったです。
しかし、使うのはスローモーションなので、ごく短いカットが撮れていれば、4倍ほどに引き伸ばせるので、何とかなったと言うことを編集時に気が付きました。



Sony APS-C Super35 4K ミラーレス α6300 Eマウント用マウントアダプターのまとめ

M42-NEX接写ヘリコイド内蔵アダプター Eマウント、フルサイズ対応 

https://www.youtube.com/user/yuchica0001/videos

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muk 小菅宗信