引き伸ばしレンズをミラーレスカメラに装着する方法



引き伸ばしレンズのカメラへの装着は、ネット黎明期から先駆者達のトライがありました。mukの前身である「物売り掲示板」時代よりM39-M42アダプタリングの引き合いは多くありました。
みなさんよく研究されており、こんな物あんな物が欲しいなどのご提案から色々勉強させてもらったものです。


近頃ではマウントアダプターブームを経て、初心者の方も引き伸ばしレンズに興味をお持ちになり、
「引き伸ばしレンズをつけるアダプタをくださいな。」とご注文をいただきます。
そうは問屋がおろさないのが引き伸ばしレンズで、その辺の説明を少し書い
てみたいと思いました。

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こんなことを知ってほしい。



引き伸ばしレンズには決まったフランジバック長がありません。
焦点距離によって、フランジバック距離は違います。
また、同じ50mmレンズでもメーカーやモデルの違いにより、マウント面の位置
が異なります。
よって専用マウントアダプタ―もありません。
mukでは「工作部品」と呼んでいるパーツや、ヘリコイド付きマウントアダプタを
適材適所で組み合わせた使用例を掲載しております。

大判カメラをやっていらっしゃる方には特別な事でもなんでもない事ですが、
35ミリカメラやそれに準じたデジタルカメラとは違い、装着するレンズによって
積極的にバックフォーカスを確保しなければなりません。
このあたりの事を知っていれば、どんな部品が必要かわかるようになります。


フランジバックはどんな感じか、持っている引き伸ばしレンズを
暗室から引っ張り出してきました。
集めたついでに無限遠時のフランジバックを測ってみました。
レンズマウント面からセンサーまでの距離です。



レンズ             フランジバック
ELニッコール50mmf2.8 43mm程
ELニッコール50mmf4    44mm程
ELニッコール75mmf4    62.5mm程

フジノンEX 50mmf2.8 38mm程
フジノンEX 90mmf5.6 81mm程

フジナー  50mmf4.5 42.4mm程

ベガ    50mmf2.8    30mm程

フランジバックの数値は大まかです。

この通り、フランジバックの距離はマチマチです。
他のレンズの数値は持ってないのわかりません。
撮影用のレンズではないので、このような数値は公開されてないでしょう。


カメラに装着して撮影するには、
レンズのフランジバックの距離から、各カメラのフランジバック距離を引いた数値内に部品を組み込みヘリコイドの稼働域を納めればよいのです。

α7などEマウントのフランジバック        18mm
GM5などマイクロフォーサーズのフランジバック  19.3mm
X-T10などXマウントのフランジバック    17.7mm

●フランジバックの確認法



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簡単な話ですが、無限遠に向けてお手持ちのレンズをカメラにかざして、モニターを見てください。
焦点の合うところで、カメラマウントからレンズフランジまでの距離を測ってください。
(白く画面が見えない場合は、軽く遮光してください。)
それにカメラのフランジバックを足した数値がレンズの持つフランジバックの長さです。

ここでは、各機種に対応して説明するため、カメラのフランジバックを足した数値を出しましたが、
お持ちのカメラで距離を測った場合はそのまま考えていただければOKです。



それでは、汎用の部品を組み合わせてみましょう。


●マウント部分のパーツ


薄型M42マウントアダプタ ソニーEマウントと富士Xマウント用とマイクロ・フォーサーズ用こちらをクリック




各マウント用で厚みが違います、ご注意ください。

Eマウント薄型M42 muk UM42-NEX  厚み1.5mm


フジXマウント薄型M42 muk UM42-FX 厚み4.9mm


マイクロフォーサーズ薄型M42 muk UM42-MFT 厚み5.9mm


●ヘリコイドユニット


M42 ヘリコイドユニット 2種類 はこちらをクリック


muk M42H13
全長13mmから22.5mmまで、9.5mm繰り出します。

muk M42H15
全長15.4mmから27.5mmまで、12mm繰り出します。



●マクロチューブセット


M42 マクロチューブセットはこちら

muk M42MTS
厚さ、7mm,14mm,28mmの3点セット
マウント部分とヘリコイドユニットでフランジバックの距離に達しないときに
調整します。


●M42-M39アダプタリング


M42-M39アダプタリングはこちらをクリック

厚みゼロ。

上記部品はM42のオスメスで接合出来るようになってます。
引き伸ばしレンズは、M39が多いです。
M42との接合に使います。




他にも引き伸ばしレンズ利用できるマウントアダプター

●M42接写ヘリコイド内蔵アダプター



muk M42H-NEX RJ
 ソニーEマウント用M42ヘリコイド付きマウントアダプター

M42マウント規格に準じたフランジバックのマウントアダプタです。
最短時27.3mm
最長時59mm
繰り出し量31.7mm

muk M42H-MFT RJ
マイクロ・フォーサーズ用のM42ヘリコイド付きマウントアダプター

最短時26.2mm
最長時55.2mm
繰り出し量29mm

muk M42H-FX RJ
フジXマウント用のM42ヘリコイド付きマウントアダプター

最短時27.8mm
最長時58.8mm
繰り出し量31mm


●ライカMマウント接写ヘリコイド付きアダプター



LMリングと組み合わせてM39引き伸ばしレンズに使えます。

muk LMRJ○○
muk L-Mアダプタリングはこちら
ライカに使用する目的でないため、何ミリ用でもかまいません。


muk LMH-NEX RJ
ライカM 接写ヘリコイド付き ソニーα Eマウント用マウントアダプターはこちら

LMリングと合わせて、厚み11.8mmから繰り出し7mm

muk LMH-FX RJ
ライカM 接写ヘリコイド付き フジXマウント用マウントアダプターはこちら


LMリングと合わせて、厚み10.2mmから繰り出し7mm


●M-M 接写リング10mm



muk M-M 10 RJ
M-M 接写リング10mm ライカMマウントの接写リングです。


ライカMマウント接写ヘリコイド付きアダプタとの組み合わせで使える10mmの
中間リングです。


●L(M39)スクリューマウント用接写シムリングセット



muk L39SimRing
L(M39)スクリューマウント用接写シムリングセット

L(M39)スクリューマウント挟みこむシムリングセットです。
1.5mm
1mm
0.5mm
3点セットです。

微調整に使えます。


お持ちの引き伸ばしレンズに合わせて、
厚みを参考に羅列した部品を組み合わせてください。




では、組み合わせの例を見てください。



普段は、現物あわせでやってましたが、せっかく書いたので数値にから組み合わせてみました。

●α7とニッコール50mmf2.8の組み合わせ例



レンズのフランジバックは43mm程です。
α7のフランジバックが18mmみですので、
差し引き25mm程の空きにヘリコイドユニットが収まれば良いことになります。

muk UM42-NEX  厚み1.5mm
muk M42H15   厚み15.4mm

マウント部品とヘリコイドユニット入れてもまだ、8.1mmあまります。
muk M42H15は12mm繰り出すのでこの組み合わせでも無限遠から撮影できますが、
もう少しヘリコイドの稼働域を有効に使いたいのでマクロチューブの7mmを足し
ます。

muk M42MTS 厚み7mm

39mmに変換します。
M42-M39アダプタリング 厚み無です。

合計23.9mm
そこそこ来てますね。

追い込むなら、
muk L39SimRingでもう少し行けます。

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●GM5とフジノンEX 90mmf5.6の場合



レンズのもつフランジバックは81mm程です。
(同じフジノン90mmでも世代によって違う距離の物があります。実際測って考慮
してください)
マイクロフォーサーズのフランジバックが19.3mmですので、
差し引き61.7mm程の空きにヘリコイドユニットが収まれば良いことになります。

望遠ですので、ヘリコイドの繰り出し量が大きいmuk M42H-MFT RJを使ってみます。

muk M42H-MFT RJ 厚み26.2mm

まだ、差し引き35.5ミリほどあります。
繰り出し量29mmなのでまだ足りてません。
マクロチューブセットで調整します。

muk M42MTS 厚み28mm+7mm

差し引き0.5まできました。

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繰り出し量が大きく、無限遠からこの辺まで寄れます。



●X-T10とロシア製引き伸ばしレンズ ベラ50mmf2.8では、



レンズのもつフランジバックは30mm程です。
fuji Xマウントのフランジバックが17.7mmです。
差し引き12.3mmととても短いです

ヘリコイドユニットが収まる数値でもないので、ライカMマウント接写ヘリコイ
ド付きアダプターを使います。

muk LMH-FX RJ + muk LMRJ○○ 厚み10.2mm

差し引き2.1mm
繰り出し量が7mmあるので5mm程繰り出せます。

muk L39SimRingでもう少し詰められます。

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お持ちのレンズにあわせて、適材適所で組み合わせてください。





●引き伸ばしレンズの中には、暗室で絞りを見やすいように明り取りの窓があるレ
ンズがあります。撮影に使う場合はふさいでおかないと光線漏れがおきます。お気を付けください。

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●39mmよりマウント径が小さい引き伸ばしレンズ。



お客様からのご相談でウォーレンサックの引き伸ばしレンズのご依頼がありました。

Wollensak Enlarging Raptar 1:4.5/50mm
このレンズのスクリューマウントは30mm程の径で、対応するリングは見たことが
ありません。こういう場合は、M42かL39のボディキャップに穴をあけて対応しま
す。使用するボディキャップは金属製が望ましく、加工はmukでご相談ください。

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金属製ボディキャップはこちらをクリック



●番外編


引き伸ばしレンズ以外にもヘリコイドのついてないレンズは世の中にたくさんある
ようです。

こちらは、テレシネ用のレンズ。TVトプコール62mmf5.6です。
テレシネとは、映画をテレビ信号に変換(今でいうデジタルデュープ的な)する
ことです。

マウントはM39なので、引き伸ばしレンズと同じ要領で装着できます。

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お客様コーナーです。
色々なトライをしている強者がおります。ご覧ください。
http://blog.monouri.net/archives/cat_50028372.html

ご来店のお客さんがお持ちした、ロダゴン35mmf4 ↓
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↓SONY α7 + 引き伸ばしレンズ EL Nikkor 50mm f4.0 & 75mm 動画をご覧ください。



是非楽しんで工作してください。



muk 小菅宗信